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増えすぎ?実は競争が激しい薬剤師の世界
実際にこちらの厚生労働省 「令和2(2020) 年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」で公表されているデータによれば、病院・薬局薬剤師の数が増え続けています。
厚生労働省 「令和2(2020) 年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」より
薬剤師の数が増えるということ自体は社会にとってよいことですが、職場の数はそうそう増え続けていくはずもなく・・・
そうなると、薬剤師にとっては「激しいパイの奪い合い」の競争世界になっていきます。
その中で「勝ち組」となって生き残るためには、薬剤師はベストなキャリアパスを選択しなければ死活問題です。
そこで、薬剤師というお仕事の特殊性から考察した、最適なキャリアパスを選ぶポイントを説明していきます。
薬剤師のキャリアパスを理解しないのは失敗のもと
そもそも、薬剤師は一般的な職業と全く異なるキャリアパスを通ります。
もちろん、薬剤師の資格を持ちながら製薬企業や一般企業に務めている方も多いですが、そうでない限りはその特徴を理解しておかないと、いざ失敗したら取り返しがつかないことだってあり得ます。
薬剤師の年収の年齢推移は一般と違う
厚生労働省 職業情報提供サイト "job tag"でも、この調査結果をいろんな側面から視覚的に見ることができます。
年齢による年収の推移を見てみると、薬剤師は 55〜59 歳で年収のピーク (717 万円) を迎え、60歳〜70歳でも平均年収 500 万円を維持することがわかります。
つまり、若いうちから高収入が期待できるけれども40歳以降は昇給が停滞する、といった特性があります。
厚生労働省 職業情報提供サイト "job tag" より
つまり、薬剤師はそもそも給与が上がりにくいのです。
一方、一般的な「営業事務」では、59歳まで年齢が高くなるにつれ年収が上がる、まさに「年功序列」型の推移をたどります。
厚生労働省 職業情報提供サイト "job tag" より
つまり一般的な職業では、昇進・昇格しなくても年齢に応じて「昇給」が期待できる社会だと言えます。
(ただし、今そのロジックがどんどん崩れていて、多くの企業では業績や職務に応じた給与体系に移りつつあります。)
ですが薬剤師は、給与が上がりにくいからといって決して辞めてはいけません。
薬剤師は早くに高収入が期待できるけれど、そのあとは年収が上がりにくいという特性を考えて、安定的な昇給を目指すのか、昇進・昇格して管理職としてステータスアップを図るのか、薬剤師として社会貢献することに重きを置くのか、といったキャリア設計を考えることが重要になってきます。
薬剤師のキャリアパスは一方通行
薬剤師の資格を持っていたとしても、他の看護師や介護士と違い、資格の必要のない一般の企業や職種を選ぶことも多々あります。
だからといって、職種間の流動性が高いわけでも、自由度が高いわけでもありません。
薬剤師が薬剤師として転職・復職するには、キャリアパスが「一方通行」であることを十分に理解しておかなくてはなりません。
こちらは、一般社団法人 薬学教育協議会「令和4年3月就労動向調査結果報告書」と厚生労働省「令和2(2020) 年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」より新卒と薬剤師全体の勤務先の割合をまとめたものです。
割合として新卒から勤務先の動きがほとんどないことがわかります。
あるとすれば、後でもデータを解説しますが、医療機関と薬局の間の動きと、各企業や機関から薬局への動きに限られ、その逆はほとんどありません。
一旦薬局や病院に就職すると、事実として他の企業や機関、職種への再就職が簡単ではないのです。
令和3年度厚生労働省医薬・生活衛生局総務課委託事業 「薬剤師確保のための調査・検討事業報告書」からの報告でも、転職や復職を経験した薬剤師の前職がほとんど病院か薬局で、薬局と病院の間でしか移動がないことがわかります。
ただ薬局に関しては、製薬企業やドラッグストアなど店舗販売業からの流入が少しあるようです。
病院薬剤師と薬局薬剤師の違いとは
釈迦に説法かもしれませんが、病院薬剤師と薬局薬剤師は対象となる顧客が違うので、その仕事の内容は全く異なります。
病院薬剤師の業務とメリット
外来や入院患者の服薬指導など病棟業務のほか、緊急救命業務を担うことがあります。
救急救命業務とは救急外来で来院・搬送される患者さんに対応する業務です。
生命に関わるような一刻をあらそう場面にも遭遇するため、迅速な判断が求められます。
治験業務 (承認前の新薬の臨床試験に関わる業務) があることも、病院薬剤師ならではの特徴です。
病院薬剤師のメリット
▶ 病院臨床医療・チーム医療に携われる
薬剤管理の専門家として入院治療や救命救急治療に深くかかわり、さまざまな疾患と症状を実務体験の中で学べます。
チーム医療の中で、自分から処方提案や意見することもあり、責任が大きい反面やりがいを感じます。
▶ 薬剤師として最先端の立場
承認されたばかりの新薬を使用することがありますが、そのような薬の情報量が多くありません。
率先して新薬の情報収集を行い、医師へ情報提供しなければなりません。
そういった医師と対等な立場にいられることが、ひとつのやりがいとして感じられます。
▶ 長く勤めると給与が上がりやすい
この後に詳細な情報がありますが、薬局薬剤師と比べると病院薬剤師の初任給は低いとぶん、経験を積むと定期昇給で基本給がアップすることが多いです。
薬局薬剤師の業務とメリット
病院から発行された処方箋に基づく薬の調剤や販売、お客さんの症状に合わせた薬の提案など地域医療の担い手となります。
在宅医療の患者さんに対して、自宅を訪問して服薬指導を担当することもあります。
薬局薬剤師のメリット
▶ 求人が多い
調剤薬局やドラッグストアが中心となるため求人が多く、就職・転職しやすいです。
正社員以外の雇用形態で募集しているケースもあり、家事や育児と両立させやすいです。
▶ プライベートの時間を確保しやすい
勤務先によりますが、夜勤もなく残業が少ないです。
▶ 薬剤師としてのスキルや店舗経営に関する知識が得られる
患者さんとのコミュニケーション能力や、症状に合わせた服薬指導などのスキルを伸ばし、患者さんの悩みに対して親身に寄り添うなど地域医療に貢献できる喜びを肌で感じることができます。
また、調剤薬局やドラッグストアの経営に携われる場合は、そのノウハウを将来に独立して店舗を持つ際に活かすことができます。
病院薬剤師と薬局薬剤師に向いている人
業務内容や顧客が異なるため、向き不向きがどうしてもあります・
ご自身の特性を見直されてどちらが良いか考えることをおすすめします。
病院薬剤師に向いている人
- 最先端の医療現場で専門性を高めたいと思っている
- チームでの仕事が好き
- コミュニケーション能力が長ける
- 気力と体力がある
病院薬剤師に向いている人
- 地域での仕事を好む
- 誰にでも明るく接することができる
- 事務処理が得意である
- 店舗経営に興味がある
「勝ち組」となるため薬剤師の認定資格を取得して転職・昇進へ
薬剤師は他の業種よりも給与面や待遇面で優れているので、せっかく国家資格を持っているのですから、薬剤師として昇格や転職を目指すべきです。
では、激しい競争の中「勝ち組」として転職や昇進によりキャリアアップするうえで、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?
多くの薬剤師は、やっぱり給与をアップさせたいと思っている
令和3年度厚生労働省医薬・生活衛生局総務課委託事業 「薬剤師確保のための調査・検討事業報告書」によれば、(病院が認識する) 求職中の薬剤師が勤務先を選定する理由の1位として、「給与水準」を挙げた割合が 62.0% と最も高く、次いで「業務の内容・やりがい」が 11.7% であったことが報告されています。
(薬局が認識する) 求職中の薬剤師が勤務先を選定する理由の1位として最も多く挙げたのが「給与水準」で 58.2%、次が「勤務予定地」で 10.1% でした。
また一方で、勤務にあたり重視する事項の1位として、病院薬剤師では「業務の内容・やりがい」が 27.2% と最も多く挙げられており、次いで「給与水準」26.3%、「勤務予定地」12.4% でした。
薬局薬剤師では「給与水準」が 33.8% と最も多く、次いで「業務の内容・やりがい」が 15.3%、「勤務予定地」が 14.7% でした。
やはり、薬剤師にとっては、「給与水準」が仕事を決めるうえで最も気になる要素のようです。
薬剤師が給与や待遇を上げるメソッド
それでは、どうすれば薬剤師として給与や待遇を上げることができるのでしょうか?
月並みですが、
- 資格をとって、昇格するあるいは手当をもらう
- より良い条件の職場へ転職する
ということしかありません。
それではこれから、薬剤師がどんな資格をとるべきなのか、どのように転職あるいは復職すべきなのか説明していきます。
認定薬剤師、専門薬剤師、実務実習指導薬剤師の資格を取ろう
主な薬剤師が取るべき資格には、「認定薬剤師」、「専門薬剤師」、「実務実習指導薬剤師」があります。
実際に、これらの資格により数万円の手当を支給する薬局や、求人案件があります。
(ここに貼ったリンクは一例です)
研修認定薬剤師
日本薬剤師研修センターや当財団に研修会実施機関として許可された実施機関 (eラーニングを含む) が提供する、倫理、基礎薬学、医療薬学、衛生薬学及び薬事関連法規・制度などの講習を受け、一定期間内 (新規4年以内、更新3年毎) に所定の単位を取得した場合に認定されます。
認定されることにより、最新の知識による薬学的ケアにより信頼できる薬剤師であると示すことができます。
取得する費用は、MPラーニングの場合、新規認定が 16,500 円/年、更新が 8,800 円/年です。
詳細は、貼ってあるリンク先を確認していただけると間違いがないと思います。
認定実務実習指導薬剤師
認定実務実習指導薬剤師は、認定6 年制薬学教育制度下の薬学生に対して、医療の現場における実務実習の際に指導に当たることのできる薬剤師を認定するものです。
各領域における専門薬剤師・認定薬剤師
一般社団法人日本病院薬剤師会や日本薬剤師研修センター、そして薬学関係の学会が、特定の分野における高度な知識と技術を備えていることを認定する資格です。
専門薬剤師も認定薬剤師も認定審査に合格する必要があります。
ともに特定の専門分野について十分な知識と技術により質の高い業務を実践できることを認めるものです。
さらに専門薬剤師は、他の薬剤師に対して指導的役割を果たし、研究活動等についても行うことができる能力を有することが認められた者をいいます。
それぞれ、取得するには費用 (数万円〜十数万円) と 2〜3 年を要し、数年ごとに単位を取得して更新する必要があります。
専門薬剤師・認定薬剤師には、以下のものがあります。
(詳細はリンク先をご確認ください)
- 日本病院薬剤師会認定:がん、感染症制御、精神科、妊婦授乳、HIV感染症
- 日本薬剤師研修センター認定:漢方薬・生薬、小児薬物療法
- その他各学会認定:外来がん治療認定薬剤師 (APACC)、在宅療養支援認定薬剤師、糖尿病薬物療法認定薬剤師 など
管理薬剤師
その他には、資格ではありませんが、
「管理薬剤師」
というポジションもあります。
これは、企業や薬局の中で「薬剤部長」や「薬局長」など、他の薬剤師を監督・指導する立場の者を指します。
いわゆる管理職への昇進・昇格です。
内部昇格するか、マネジメント能力に長け十分に経験を積んだ薬剤師が転職をきっかけに、「管理薬剤師」となる場合があります。
管理職ですから、給与面や待遇面で大幅なアップが期待できます。
薬剤師の転職は薬局にチャンスあり
それでも薬剤師として転職・復職するなら、「薬局」に給与と待遇向上のチャンスがあります。
その理由の一つは、みなさんもお気づきのように、近頃の調剤部門が併設されたドラッグストアの台頭により、これまでの薬局との激しい競合もあり、薬剤師の需要が年々高まっているからです。
実際にこちらの厚生労働省 「令和2(2020) 年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」で公表されている、薬局と医療施設のの比較においても、薬局薬剤師の数が増え続けていることがおわかりいただけると思います。
厚生労働省 「令和2(2020) 年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」より
薬剤師が若いうちは、病院勤務よりも薬局勤務の方が給与が高め
そこで、病院勤務と薬局勤務のどちらが、給与水準が高めなの?という疑問が湧いてくると思います。
その答えは、平均的には「薬局」ということになります。
まず、初任給は薬局の方が高いです。
令和3年度厚生労働省医薬・生活衛生局総務課委託事業 「薬剤師確保のための調査・検討事業報告書」によれば
新規学卒者の標準的な初任給 (年収)は、病院で平均 372.7 万円 (中央値 372.0 万円)、薬局で平均 415.3 万円 (中央値 400.0 万円) と、病院と薬局では平均値で 40 万円以上の差があることが示されています。
また、年代別の給与水準を比較してみたところ、40 歳代までは薬局の方が年収の高い薬剤師の割合が高いのです。
50代以降は同等あるいは病院の方が年収が少し高くなる傾向がありました。
これは、病院から薬局へ流入する一方で、薬局に残る薬剤師が昇格して給与水準が高い管理職になるケースが多いことが要因ではないかと推測されます。
やりがい・専門性を極めるなら病院薬剤師
先に説明したように、薬剤師の給与は若いときから高いですが、そのからなかなか昇給しづらい特徴があります。
ただその分やりがいがあります。そのやりがいを追求するなら、断然病院薬剤師です。
病院臨床医療・チーム医療に携われる
入院治療や救命救急治療において薬剤管理の専門家深くかかわり、さまざまな疾患と症状について実務体験の中で学べます。
チーム医療の中で、自分から処方提案や意見するケースもあり、責任も大きい反面やりがいを感じることもできます。
薬剤師として最先端の立場にいられる
承認されたばかりの新薬を使用することがありますが、そのような薬情報量が多くありません。
率先して新薬の情報収集を行い、医師へ情報提供しなければなりません。
そういった医師と対等な立場にいられることも、ひとつのやりがいとして感じられます。
一方、 長く勤めると薬局薬剤師よりも給与が上がりやすいといった特徴もあります。
薬局薬剤師と比べると病院薬剤師の初任給は低いぶん、経験を積むと定期昇給で基本給がアップすることが多いです。
まとめ
薬剤師としてキャリアアップを目指すには、そのキャリアパスの特徴を知っておかなければ、損をする可能性があります。
- 薬剤師は年々数が増えているので競争が激しくなることが予想される
- 薬剤師の年収の年齢推移は一般と違い、最初から高収入だけど昇給しにくい
- 薬剤師のキャリアパスは一方通行で、主なキャリアチェンジは病院薬剤師から薬局薬剤師
- 認定薬剤師、専門薬剤師、実務実習指導薬剤師の資格で昇進・昇給が見込める
- 病院薬剤師と薬局薬剤師の違いがあり、転職のしやすさは薬局、やりがいは病院
以上のように、薬剤師は年収も高く、社会貢献に直結する有望な職業です。
そのキャリアパスの特性を十分理解したうえで、キャリアアップを目指していきましょう。