「なるの部屋」では、最近多くの企業で管理職への昇格試験として利用され始めている「GMAP試験」について、その概要とテスト対策について解説します。
本来は経営学修士 (MBA) で必要とされる知識や計算スキルといった、総合的なビジネス能力を問われる非常にハードなGMAP試験の対策のため、かなりの時間を勉強に割かなくてはなりません!
「なるの部屋」では、その最速の対策例を紹介します。
ちなみに、僕はこの方法で6科目すべてでAランクを獲得しました!
GMAP試験とは?
試験概要
Globis Management Assessment Program (GMAP) 試験は、グロービス経営大学院が提供する経営学修士 (MBA) プログラムで学ぶ知識のを問う総合的なビジネス能力を測る試験です。
以前はマークシート形式で行われていましたが、COVID-19の影響もあり、現在はほとんどがテストセンターを利用したオンライン形式で行われていると思います。
また、最近では、新たなWeb式受験としてAI監督型・集合型という受験方式が提供されているようです (僕はこれを受けたことがないので・・・)。
GMAPには、GMAP-CT (クリティカル・シンキング) とGMAP-BF (ビジネス・フレームワーク) の二つの試験があります。
それらのうち最近、「BF試験」の方が企業の管理職への昇格試験に応用されるケースが増えてきているようです。
GMAP-BF試験はファイナンス、アカウンティング (企業会計)、マーケティング、経営戦略、人的資源管理、組織行動科学6つの科目から構成されており、その対策としてそれぞれの科目について幅広くかつ各論的な知識や、計算能力を身に着ける必要があります。
これらの科目の問題数と制限時間は以下の通りです。すべて四択問題です。
実質的に1問につき1分もかけられません。
なお、企業会計とファイナンスでは計算問題がありますが、計算機が使えます。
テストセンターやWeb受験ではブラウザ上の計算機機能を使います (テストセンターでは、卓上にメモが用意されますが、時計、携帯電話、ドリンクを含む所持品の持ち込みが禁止されます。テストセンター内のロッカーに預けることになります)。
各科目の内容と出題数、時間は以下の通りです。
科目 | 試される能力・知識 | 項目 | 問題数 | 時間 |
---|---|---|---|---|
マーケティング | 顧客に商品を買ってもらう仕組みを作る力 | マーケティング・プロセス、流通戦略、製品戦略、コミュニケーション戦略、価格戦略 | 30問 | 20分間 |
経営戦略 | ビジネスの成功させる戦略を立てる力 | 全社戦略、内部分析、戦略経営、戦略の基本パターン、外部環境分析 | 30問 | 20分間 |
人的資源管理 | 企業が人財を確保・育成し、機能させる方法 | 企業経営と組織・人のマネジメント、人事システム(評価/報酬)、組織構造、組織文化、人事システム(採用/配置/育成) | 30問 | 20分間 |
組織行動学 | 個人が人や組織に影響を与える力 | 個人のマネジメント、リーダーシップの基礎、人間関係のマネジメント、変革のマネジメント、集団のマネジメント | 30問 | 20分間 |
企業会計 | 企業活動の成果を測り分析する力 | 財務諸表の構成、管理会計のツール、財務会計の枠組み、マネジメント・コントロール 、財務指標分析 | 20問 | 20分間 |
ファイナンス | 資金調達や投資などの知識と意思決定力 | キャッシュフロー、資金調達、投資評価、企業価値、リスクの概念 | 20問 | 20分間 |
評価方法
GMAP試験の結果評価にはスコアとそれに応じたランキング (ABCDE評価) が用いられています。
単純に正答率でスコアリング (絶体評価) するのではなく、その時その時の問題の難易度に差が出てしまうため、TOEICのように相対評価されます。
科目ごとに、一般的な受験者の正答率が正規分布していると仮定し、その平均値を500としたときに受験者がどの位置にいるかを偏差値として割り出します。
スコア600以上なら上位16%以内、700以上だと上位2%以内に位置します。
高校・大学受験の偏差値の10倍と考えるとわかりやすいと思います。
ランク | 合否 | スコア ※ | レベル |
---|---|---|---|
A | 合格 | 650以上 | 非常に高い理解度 |
B | 合格 | 600以上 | 十分な理解度 |
C | 合格 | 550以上 | 基礎的な理解度 |
D | 不合格 | 500以上 | 基礎的な知識をおおむね理解 |
E | 不合格 | 500未満 | 基礎的知識が修得できていない |
つまりこの表のように、平均点以上でも「不合格」となります。
また20問、30問しかありませんので、たった1問の正解/不正解の差がそのランクに大きく影響してしまいます。
GMAP試験の対策
先にも述べた通り、GMAPは十分な対策・学習をしないと、合格点を取ることは不可能です。
以下を参考に、モノと時間を確保して学習やトレーニングに取り組んでください。
教科書
必須教科書
最低限、こちらの教科書は入手すべきです。
一応はこの本で、GMAP-BF試験6科目の基礎を身に着けることが可能です。
まず最初は、この本を徹底的に繰り返し読んで、後で述べる問題集や模擬試験サイトの感じから、出題されそうな部分を、付箋、マーキング、別ノートへ書き出して、内容や用語を覚えるようにしてください。
四択の試験とは言え、ひっかけ問題もたくさんあるので、用語やその定義はうろ覚えでなく、記述でも回答できるようにすることがミソです。
タイアップ
補足・特化教科書
先にも述べた通り、たった1点がスコアやランクに大きく影響するので、1問も落とさないことを目指すべきです。
実際のGMAP-BF試験では、先のマネジメント・ブックの内容だけでは解けない問題もありますので、ある程度マネジメント・ブックを制覇したら、こちらで補足的な内容を中心に覚えるようにしてください。
タイアップ
例問題サイト
大元のグロービスのこちらのサイトに3問だけ例題があります。
こちらのページにも2問だけマーケティングと企業会計の例題が一問ずつ掲載されています。
また個人のサイトでこんなところもありました。
学び放題 (グロービス経営大学院提供)
グロービスのオンライン学習サービス「学び放題」も参考になります。
受講費は個人契約だと一か月あたり2000円弱ですが、もし会社で団体契約しているようなケースだと、もう少しリーズナブルな価格で利用できると思います。
基本的なものから応用編まで、非常に多くのコースやコンテンツがありますが、GMAP-BF試験のためだけに受講するのなら、6科目に関連するものだけ受けるとよいと思います。さらに各コンテンツでは、試験に出るけれども教科書にはない内容も含まれています。
また、各講座を1.5~2倍速で観ることをお勧めします。
かなり、ゆっくりめで録音されているので、倍速でも内容を十分キャッチアップできますし、学習時間の短縮になります。
また、各講座を修了すると契約期間中いつでも、講座資料がサイト上で見ることができるます。
この資料は、必要な内容が非常によくまとまっているので、先に紹介した教科書のサイドノートとして活用するとよいと思います。
特にハイライトしている用語や模式図で書かれてあるマーケティング手法は、出題される確率が高いので要注意です。
講座の最後で受けるテストは、難易度は低いですが、GMAP試験形式なので、こちらも非常に参考になります。
各科目の学習方法と試験本番での注意点
マーケティング/経営戦略
先にも述べた通り、マーケティングと経営戦略は重複することがあり、出題形式もよく似ているため一緒に学習した方が効率がよいので、ここではこの二科目の対策と注意点をまとめて解説します。
マーケティングでは、用語の定義や正しい用語自身を選択させる問題や、環境分析→セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング→マーケティング・ミックス→実行と評価といったマーケティングプロセスの順番や役割を問う問題、製品ライフサイクル戦略、フレームワークを用いたマーケティング分析に関するケース問題などが出ます。
経営戦略でも、用語や定義の選択問題の他、経営理念やビジョン、戦略レベルの戦略のプロセス、事業のライフサイクル・ポートフォリオ・マトリクス、事業の経済性分析、バリューチェーン分析等のケース問題が出ます。
なお、本番では”NO”や"FALSE"を答えなければならない問題があるので注意してください。
まず、教科書 (マネジメント・ブック ) 中の小見出しになっている用語、①②③など番号付けになっている用語、”「」”で囲われた用語について、そが の定義や微妙な用語の関係性を含め、隈なく覚えるようにしてください。
ある程度学習を進めても、教科書の中でまだうろ覚えあるいは不安のある用語は、別ノートに書きだしておいて、時間が空いた時にノートを見て確認するようにしておいた方が良いです。
また各戦略やプロセスをなぜ行うのか、その結果何を期待できるのか、を空で話せるぐらいに理解しておいてください。
さらに、各マーケティング・戦略的フレームワークの用語の穴埋め問題にも対応できるように、フレームワーク上の用語を覚え、その目的と効果も答えられるようにしてください。
30問しかありません。1問の正解・不正解の差が結果に大いに影響します。
ですから、マネジメント・ブックにない内容を中心に、「マーケティング」と「経営戦略」そして、「学び放題」で閲覧できる資料も併せて参考にして、ご自身の守備範囲を広げておいてください。
人的資源管理/組織行動学
人的資源管理と組織行動学も重なりが広いので、こちらも一緒に解説していきます。
双方とも、「学習」といった意味では覚えにくい科目です。
他の科目と比べて専門的な用語が少ないですし、出題もケーススタディ的なものが多く、試験ごとに難易度が大きく変わる印象があります。
僕も、昇格前1回、昇格後2回受験して、スコアやランクが大きくぶれた科目です。
有名なマズロー5段階欲求などモチベーションに関連するもの、 のコッターのリーダーシップとマネジメントの違いなど、個人に対するものから、組織文化、組織形態、人財配置など高次のマネジメント層が検討する組織構造に関するものまで、マネジメント・ブック にある各ページのタイトル・小見出しになっている用語とその定義、目的、プロセスを覚えておくようにしてください。
こちらも、「学び放題」で閲覧できる講義資料の図表が良くまとまっているので、繰り返し眺め、図式の穴埋めを想定して要所の用語を覚えているようにしてください。
なお、マズローの5段階欲求は、教科書・資料によって各段階の名称や分類が多少異なるので、どのパターンであっても対応できるように、それぞれを覚えておいた方がよいです。
こちらも、本番では”NO”や"FALSE"を答えなければならない問題があるので注意してください。
企業会計/ファイナンス
この二つの科目だけは20問ですが、その理由は計算問題があるからです。
覚えなければならないことが多いうえに、難易度も他の科目に比べて高く、もっとも学習に時間をかける必要があると思います。
まずマネジメント・ブック の各ページの小見出しになっている用語は、定義と併せてすべて覚えてください。
計算問題については、よくあるミスで算出されるような数値が混ざっているので、計算した結果がちょうど選択肢の中にあったとしても、安心できません。
企業会計 (アカウンティング) については、財務諸表 (損益計算書、貸借対照表、3つのキャッシュフロー計算書) については、用語やその計算方法を完全に覚えておく必要があります。
連結会計方法についても理解しておいてください。
これらのうちどれかに関連する計算問題が必ず出題されます。
ROE/ROAといった総合分析、収益性/安全性分析の用語の定義や計算式も覚えて、計算問題にも対応できるようにしておいてください。
損益分岐点分析については、必ず出題されます。これは用語・計算問題ともに取りこぼしがないように、完璧に答られるようにしてください。
減価償却、原価計算、たな卸資産など、他の項目についても重要ですのでご注意ください。
なお、現在は日本の会計基準をもとにして出題されますが、今多くの企業で国際会計基準であるIFRS (イファース/アイファース) が採用されつつあるので、いずれこちらを元に出題されるようになるかもしれませんので、一応注意しておいてください。
ファイナンスの計算問題が一番厄介です。例文から最も適切な計算式を選択しなければなりませんし、計算式もアカウンティングよりも複雑なので、時間を要します。
本番のテストでは、時間がかかるわりに正答率が高くないので、ファイナンスの計算問題を一番最後に回答した方が良いと思います。
これに時間を食ってしまい、他の正答率が高い問題を取りこぼしてはいけません。
最も基本となる、現在価値計算と割引キャッシュフロー (DCF) 法は、計算できるようにしてください。
その応用である永久年金法や正味現在価値(NPV)法、内部収益率(IRR)法にも要注意です。
投資リスク計算や加重平均コスト、株式資本コストなどは計算式が複雑すぎて、普通の計算機では計算できないため計算問題としては出題されないと思います。
ただし、計算式の穴埋めや、変数の名称の選択などが出題されることがありますので、計算式は頭に叩き込んでおいたほうが無難です。
もちろんこちらでも、本番では”NO”や"FALSE"を答えなければならない問題があるので注意してください。
まとめ
最後にGMAP-BF試験の対策についてまとめます。
- 教科書、問題集を入手
- 例題があるサイトも参考にする
- 可能であれば、グロービスの「学び放題」を受講し、受講後の小テスト、講義資料を参考にする
- 教科書の各ページのタイトル、見出しになっている用語を定義とともに覚える
- うろ覚えな用語や定義を別ノートに書き出して覚える
- 企業会計・ファイナンスでは、計算問題が必ず出る
- 損益分岐点分析は必須問題
- 計算式の穴埋めにも対応できるようにする
- 本番では”NO”や"FALSE"を答えなければならない問題があるので注意する
この記事を参考にすることで、してGMAP-BF試験をクリアして、昇格されることを切に願っています。