エッセイ

ハラスメントとの戦い ー その弐 ー

2023年3月6日

著作者:kjpargeter/出典:Freepik

気持ちを新たに、張り切っていましたが・・・

異動した先の上司は、一見スマートで上層部からの信頼が厚いように見えていました。
しかし実際のところ、自分の利益を最優先する人で、業務上で何かしら失敗したり、あるいは指示と違うこととをして違う結果になったときに、部下に激しい叱責をするような人でした。しかも人前で。結局、上ばかりを見ていて部下の心情には心を向けず、周辺のみんなを傷つけ続けることに何も感じない人だったのです。

当時のひどいトピックとしては、会社の行事の後二次会にカラオケに繰り出され際に、酔った勢いからでしょうか、歌いもせず、まず自分の自慢話を繰り返した後に、夜中の2時ぐらいまで4時間ぐらい説教を受け続けました。カラオケ店は上司の自宅から近かったので、彼は歩いて帰られましたが、僕と同席していた同僚はもう電車も当然なく、途方にくれたことを記憶しています。(なんとかほかの知人に車に乗せてもらうことができましたが)

そんな人が上司でも、少しでも自分のなりたい姿に近づけるように、会社に自分のことを認めてもらえるように、できるだけより早く結果を出すために夜遅くまで働くようになり、精神も体力も蝕まれていきました。

そこで改めて、自分おかしなことになっていることに気づきました。
当時仕事で毎日細胞培養をしていました。無菌状態を維持するための「クリーンベンチ」や「安全キャビネット」という装置があるのですが、その中でガスバーナーを使います。退社した後に、その「バーナーの種火を消したかな?」「ガスの元栓を占めたっけ?」と不安になって会社に引き返すことを繰り返しすようになりました。
そのうち、そういった心配事の範囲が広がり、「試験材料用のフリーザーを閉めただろうか?」「水栓は閉めただろうか?」「部屋の鍵は閉めただろうか?」といったところまでに及び、「もしかすると、会社に損害を与えて、自分がまた叱責される」という恐怖にさいなまれるようになっていったのです。

もちろん、ちゃんと何回も確認して大丈夫なのはわかっているんです。でもどうしてもその不安が拭いきれないんです。
大丈夫、大丈夫と心に言い聞かせようとしても、逆効果でその思いにとらわれてしまうのです。

最終的には、自分が最後まで毎日会社にとどまって、事細かにチェックリストを作って、確認して分電盤を切り会社の鍵を施錠して、夜中の12時を回って帰宅するという日を1年間以上過ごしました。それでもやっぱり不安で、日曜に未明に会社へ車を走らせて会社に行って異常がないことを確認するということを毎週続けていました。

家族にもすごく迷惑をかけてしまいました。ただやっぱりこの異常な行動には理解が得られず、家でも責められてしまうことが続きました。

そんな中で、テレビの特集か何かで「強迫神経症」が取り上げられていたのを見て、「自分が苦しんでいるはこれや!」と気づきました。
そこで、この病気に強いとされる総合病院に飛び込み、治療を受けることにしたのです。

しかし、治療を受けたからと言ってすぐに良くなることはありませんでした。
当時のいわゆる「抗うつ薬」というものを処方されたのですが、やっぱり効かないんです。そのうちに薬の量とか種類とかがどんどん増えていきました。
副作用もきつく、その一つが便秘でした。
おなかがずっと張っていました。下剤も同時に処方されましたが、出るのは3日に1度ぐらいになっていました。

またもう一つが、「離脱症状」でした。便秘がつらいので、休日は飲むのを控えたのですが、そうすると全身に倦怠感を覚え、熱がないのに動けなくなる・・・。

もうどうしようもないところまで追い込まれていました。

そんなとき、ペアで仕事をしていた女性が異動することになりました。
問題となっている上司から直接聞いたのですが、その女性がよくミスをするので自分の責任にもなりかねないから、異動してもらうように上に申請した、というのです。

いや、確かにその人はミスが多かったですが、それでもそれを予防措置を考えたり、教育したり、育成したりするのがマネジャーじゃないですか?しかも自分の評価に影響するからって…。
そこで初めて気づいたんです。こんな人の下で無理に頑張らなくてよいって。自分がこの先この会社で働かなくてもいいんだって。

そのあと、病院で診察を受けた後、会社の診療所に電話して症状と原因をすべて打ち明けました。
ずっと自分の評価に影響すると思ってだまって抱え込んでいたいたことを。
その足で会社に向かい、すぐに診療所で産業医と面談することになりました。
そして、異動するのがベストだろうと。産業医から人事部に話をしてくれたらしく、およそ1か月後に別の研究所へ異動することになりました。

ただし、その上司には何のお咎めもなく、残された同僚はずっと同じような扱いを受けるかもしれない…。
そういった負い目を感じながら異動しました。
その後、原因がなくなったことで、強迫神経症は徐々に改善していきました。残された同僚を、みんなを心配しながらも…。

その弎につづく…。

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    なる

    キャリア形成ブロガー|綿密な取材と自身の転職経験と実績に基づき、転職・昇格に関する有益情報を発信| マネジャーとして多くの若手社員を指導・育成|心の病を乗り越えてハイエンド転職を実現|転職で年収アップ 100 万円以上を達成|現在外資系企業マネジャー|関西在住|これからも皆さんの社会人生活が少しでも豊かになるように情報発信していきます!

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